Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
兄法主でもない人を指している。
築地別院に遺骸が安置され、お葬儀の前に、名残りをおしむものに、芳貌をおがむことを許された。
二月八日の宵だった。梅の花がしきりに匂っていた。わたしは心ばかりの香を焚いて、「秋の夜」と署名した武子さんからの手紙を出して、机上においた。そこへ、安成二郎さんが訪れられて、どうしてお別れにいって来ないのかといわれた。蘭燈にてらされて、長い廊下を歩いていって、静な、清らかな美しいお顔を見ると、全くこの世の人ではない気がしたといわれた。そして、どうしてゆかないのかと、再び問われた。
あまり多くのものに、死者の顔を見せるのは嫌いだから、見られるのはお厭だろうと思うと、答えたわたしの胸には、ちょっと言いあらわせないものが走った。
震災前、あの別院が焼けない前に、ある日の日かげを踏んで、足許にあつまる鳩を避けて歩きながら、武子さんに、ずっと裏の方の座敷で逢ったことがあった。その時ふと胸にきたものは、あんなに麗かな面ばせで、れいれいとした声で話されるに、憂苦といおうか、何かしら、話してしまいたいといったようなものを持っていられるということだった。