Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
浜子の方に狂いはない。その日の帰りに、千束町を出ると夜暗の空に、真赤な靄がたちこめて、兀然と立ちそびえている塔が見えた。
「あれは、なんだろう。」
私は、すこしぼんやりしていて、見詰めて立ちどまった。
「公園裏の方にあたるから――十二階でしょうよ。」
「ああ、凌雲閣?」
まあ、なんて綺麗なのだろうと、二人は夜の、浅草公園の裏から見る、思いがけない美観に見とれた。
――楽劇「浦島」!
私の頭のなかに、いつか手をつけて見たい、大きな望みがその時、かすめて過ぎた。
楽劇「浦島」の一部分上演を、坪内先生から許されたのは、それから二、三年後だった。
浦島は六代目菊五郎、狂言座第一回を帝劇で開催するときだった。
作には、箏の指定はないのだ。各種の三味線楽と、雅楽類だったのだが、私は、おゆるしをうけて、浜子の箏を主にして、三味線は一中節の新人西山吟平、雅楽は山之井氏の一派にお願いしようとした。
だが、なんといっても箏の浜子を説きおとすことが一番の難関なのだ。
わたしはぶらりと行って、なんでもないような顔をして、彼女を散歩に引き出した。伊勢山の太神宮の見晴しに腰をかけた。