Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
あて、どうしても嫌どす。」
縮緬のじゅばんの袖口がちぢれるほど、ハンケチとちゃんぽんに涙を拭くのだが、相手は、
「そんなことは、他へいっていえよ。僕が泣かれたって、どうにもならない。お母さんたちのいう通り、うんと吹っかけて見るんだな。本当に惚れてなきゃ、いくら米国人だって酔狂で大金は捨てやしまい。」
お雪は、そんな相談を、心から思っている、修業盛りの学生にきかせて、頭を乱させる気はないので、その人には、なるべく、きかれても隠すようにしているのだった。
で、正妻でなくっては――から、養子に来る気ならば――になり、最後に四万円と切り出した。
四万円――現今なら、その位のお鳥目ではというのが、新橋あたりにはザラにあるということだが、日露戦役前の四万円は、今からいえば、倍も倍も、その倍にも価する金の値打があったのだろう。赤坂の万竜は、壱万円で、万両の名を高くしてさえいる。
祇園のある古い女がいった。
「世界大戦のあとで、なにもかも三倍になったので、パイのパイのパイという唄がはやりましたなあ、あれは倍の倍の倍ということなのどすえ。」と。
その、パイのパイのパイ時代になると、舞妓の帯も竜の眼にダイヤの大きなのが光るようになったが、モルガンはお雪に、四万円を、突然ズラリと並べたのではない。