Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
ませ子さんは言う。
「姉は利口でしたものね、気むずかしい方に、実によく勤めていました。」
衷氏が歿くなった時のお通夜や、仏事の日などは、ありとある部屋に、幾組といってよいかわからぬほどのお客をして接待した欣々女史、その新盆には、おびただしい数の盆燈籠を諸方から手向けられたのを家中の軒さきから廊下から室内の天井へずっとかけつらねさせたという、豪華なことのすきな彼女が、練馬の新築の家では、夜になるとピンピン、キシキシと、木材のひわれる音に神経を悩まして、いやだというように弱くなってしまったとは、美貌の誇りと、栄華の夢のさめぎわの、どんなにさびしいものかという底に、それよりほかの根はなんにもないであろうか? あたしは否といいたい。
それは派手な気質もあったであろうが、あれだけの珍しい才能の人に賑やかしにばかり反れていった一面も見なければならない。あたしははじめてあったあの宵節句の晩の感想を、こんなふうに書きつけてある。
――まだ春寒い夜更けの風に吹かれて門を出ながら、しみじみと、この華やかな人の心のかげに潜む、どうしても払うことの出来ない、人世の果敢さというものについて考えさせられた。