Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
子供のときから、御狂言師で叩き込んでいるので踊のおさらいのような、けばけばしい鏡台前ではなかった。筆は一本兎の足が一ツという簡素さだ。お茶とかき餅がすきなので、それだけは、いつも傍らにある。
「桂がさきへ帰るからね、晩御飯に、さんま食べるって――浅漬もとっといておくれ。」
湯呑みと手鏡を持って、舞台裏まで附いてゆく静枝にいいつけた。
根岸の家は茶座敷などもあって、庭一ぱいの鷺草が、夏のはじめには水のように這う、青い庭へ、白い小花を飛ばしていた。
そんな日の午前、紫の竜紋の袷の被衣を脱いで、茶筌のさきを二ツに割っただけの、鬘下地に結った、面長な、下ぶくれの、品の好い彼女は、好い恰好をした、高い鼻をうつむけて、そのころ趣味をもった、サビタや、メションや琥珀のパイプを、並べて磨いている。
養女の菊子に、台助が、意味をもった眼づかいをして、何か小用を、甘ッたるく言いつけているのを後にきいて、軽く眉をひそめていたが、台助が外出した気配にホッとしたようで、
「静枝さんは、依田先生のところへいったかい。」
「ええ、丁度、今帰りました。坂本の栄泉堂へお菓子を買いにいったら、帰りが一緒になりましたの。