Japanische Klassiker mit Furigana
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たびへのいざない
旅への誘い
織田 作之助
Lesen Sie 旅への誘い (たびへのいざない) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.734 Zeichen · 12 Bildschirme
佐藤正助、頑張れ!」
きいたことのある名だと思った咄嗟に、道子はどきんとした。
「あ、佐藤さん!」
一週間前姉に手紙をくれたその人ではないか。もはや事情は明瞭だった。学徒海鷲を志願して航空隊へ入隊しようとするその人を見送る学友たちの一団ではないか。
道子はわくわくして、人ごみのうしろから、背伸びをして覗いてみた。円形の陣の真中に、一人照れた顔で、固い姿勢のまま突っ立っているのが、その人であろう。
思わず駈け寄って、
「妹でございます。」
と、道子は名乗りたかった。けれど、
「いや、神聖な男の方の世界の門出を汚してはならない!」
という想いが、いきなり道子の足をすくった、道子は思い止った。そして、
「どうせ私も南方へ行くのだわ。そしたら、どこかでひょっこりあの人に会えるかも知れない。その時こそ、妹でございます。田中喜美子の妹でございますと、名乗ろう。」
ひそかに呟きながら、拍子の音が黄昏の中に消えて行くのを聴いていた。
一刻ごとに暗さの増して行くのがわかる晩秋の黄昏だった。
やがて、その人が駅の改札口をはいって行くその広い肩幅をひそかに見送って、再びその広場へ戻って来ると、あたりはもうすっかり暗く、するすると夜が落ちていた。