Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかも、この黙黙とした精神だけがひとり知識階級に勝手な熱情で論争せしめ、それを誇りとしてにこにこ笑って聞いている、まるで母親のような優しい姿となって泛ぶのだった。
いつの間にか雨が小降りになっていて、空も明るく晴れて来た。すると、街路樹の生き生きとした間からひとり東野がこちらへ歩いて来た。彼は千鶴子たちのいるのに気附かぬらしい様子で奥へ這入ると、論争している二人の日本人の傍へ坐って、
「やア。」と云った。
しかし、ベルリン党とパリ党の興奮した論争は東野に会釈もせずまだ続いた。そのうちに矢代たちに気が附いた東野は傍へ来て千鶴子の横へ腰かけると、
「どうも昨夜は面白かった。」
と云って論争している二人の方をまたそこから見続けた。
「何んですか、面白いって。」
「あれだ。あの論争は昨夕からまだ続いてるんだよ。もうやめたかと思って来てみたんだが、まだやっとる。」
三人は一緒に笑った。東野の話では一人のパリ党の方はソルボンヌへ生物学の勉強に通っている画家で、もう一人の方はベルリンの特派員で日本へこれから帰るところだったとのことだった。東野と画家と特派員の三人は女たちが裸体で踊る踊場へ昨夜見物に行ったところが、あの二人は入口の所でふと議論を始めたのがきっかけとなり、裸体の女の群れが波のように踊っている中でも振り向きもせず、