Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

まさかあの千鶴子にそのようなことはあるまいと充分信頼はしていても、自分でさえ桟敷で真紀子と向き合っていたときは安全とは云い難かった。葉が茎から落ちるように離点がふと身体のどこかに生じれば、意志では何んともしかねるある断ち切れた刹那が心に起るのである。すると、そこへ電話がかかって来た。

「君いたね。土産を持ってこれから行くから、寝るのは待てよ。良いか。」

電話は意外にも行方不明を心配していた久慈からだった。幾らか酔いの廻っているらしい久慈に、

「どこにいるのだ。来るのならサンドウィッチを頼むよ。」

と矢代の云ううちにもう電話は切れてしまった。

久慈が来るならもう今夜は千鶴子と話も出来ないと思い矢代はバスに湯を入れた。しばらく会わなかった久慈であるのに、何んとなく邪魔な思いのされるほど自分も変ったのであろうかと、矢代は湯をかき廻しつつまだ千鶴子の電話がしきりに待たれるのだった。しかし、湯に浸り、足を延ばして眼を瞑っているうちに、あるあきらめに似た心が頭にのぼって来た。まったく今まで友人の来るのを厭うほど理性に弱りがあったとは思えなかったが、それが今夜のこの変化である。