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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

ナポレオンはベルサイユの近くのサンクルウの宮殿から、政務に疲れるとここまで馬車で会いに来たのだそうですよ。」

英雄の情事にしたって凡人のと別に変りはあるまいと思い、矢代はそんなに云ったのだったが、悲しみあるとはいえ、ふと今自分はそれと劣らぬ愉楽の頂きへかけ昇ろうとしている真っ只中にいるのだと思った。

「でも、サンクルウからだと随分遠いのね。どうして奥さんと放れて生活していたのかしら。」

「さア、そこはどういうものかな。どちらも放れて生活していると、会うということが休息になるんでしょう。」

あながちナポレオンのことでなくとも、まもなく千鶴子とも別れねばならぬとすれば、想いを殺してこのままに別れるのも、あるいは今のこの歓びをともに生き永らえる生活の美しさとなるのかもしれぬと、矢代はまたそのように思い直し、ひと時の旅路をふり返る余裕も出来て来るのだった。

「ここはパリじゃ一番美しいところだったんだけれど、もうナポレオンもジョセフィヌもいやしない。今ここにいるのはたった二人きりなんだから、まアとにかく、不思議なこれは一つの事実みたいなものだ。」

こう云って矢代は千鶴子の顔に流れた光線の綾に微笑を投げかけ、過ぎゆくあたりの風景の何んと静かな眺めであろうと、緑の樹の間に煌めいている噴水の輪に視線を移した。