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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「おい、スープをくれ。」

と昂然とした元気で命じたことがあった。命じられた方は初めはにやにやしながらスープを出さなかった。

「おい、スープ出せ。」とまた青年は命じた。

前には自分の下だった男ながらも今はお客だから仕方なく店の者はスープを出したが、沢山の使用人らは動きを停めて一斉にその青年を見詰めていた。ある者は怒ったような眼をし、ある者は羨望の表情をしていたのを久慈は記憶している。

一列に並んでいる久慈や塩野は店が店であるだけに、外で暴れ廻っている左翼の風波については話さなかったが、次第に傾きかかろうとしているこの一家の静けさが、使用人たちの云うに云われぬとぼけた顔色に顕れているのを誰も見逃しはしなかった。

「それはそうと、日本と中国の問題、大使館の方はどんな観測かね。」

と久慈は塩野に訊ねた。

「それが油断がならぬらしいんだ。もっとも僕はただ手伝いだけだから、委しいことは知らないんだが、だんだん険悪になるばかりらしいんだ。とにかく、遠からず始まることだけは確かだろうな。」

「しかし、こっちだって相当に危いね。この模様じゃ。」

「そうだ。どっちが先きかというところをお互に知ってるから、これで案外自重はするだろうが、しかし、戦争が起ったら、僕は写真師だから、誰より真っ先に飛行機に乗せられて戦場へやられる。