Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「どの鍵も合わん。ちぇッ。」

と云って、滅茶苦茶にがちゃがちゃと鍵を廻してはまた別のを嵌めてみた。

「駄目かな、これや。」

下唇を噛んだまま手を休めて暫く扉を無念そうに仰いでいてから、彼はまた狂ったように扉に突き衝った。すると、永らく風雨に閉じ詰っていた扉は下に鮮やかな新しい条目を印けて開いた。初めて生きた気流に触れた爽爽しさで外郭へ立って見ると、ここは丁度御堂の真上の屋根のうえで鐘楼の下であった。怪獣が欄干のいたる所にたかっている。馬、熊、鳥、兎、鹿などの変態が、戯れた鬼のような容子で、のどかにパリの街を見降ろしながら遊んでいる。

「ここへ来たものは、パリの人間でも恐らく一人もいないだろうな。」

塩野は願いのかなった喜ばしさに上気して云うと、種材に溢れたあたりの風景の角度を早や急がしそうに見詰め始めた。どの怪獣も欄干や石柱と同じく、朽ちそうな黝ずんだ色に苔まで生えている。剥げ落ちたところもあれば、おびただしい鳩の糞で形の不明になった怪獣もあった。

「もうこれや、考えていられないや。」

と云うと、塩野はイコンタのシャッタを矢鱈にぱちぱちと切り放した。それもあちらこちらと誰かに追われているような風で、気もそぞろにもう後の三人のいるのも知らぬげだった。