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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

久慈と真紀子は鳩を逃がさぬように動き停った。

「足でも持とうか。風化してるからごろっといくぞ。」

「そうだな。もう二度とここへは来れないんだと思うと、はらはらしてね。この怪獣だって、後ろから撮った写真は世界に一枚もないんだから、面白くてたまらないんだ。」

久慈は塩野のバンドを掴んで彼の写真の角度を一緒にすかしてみたりした。絞り十二で五十分の一である。怪獣を撮り終えた塩野は、次に御堂の屋根の中央の所で高く屹立している尖塔の頂きを狙いにいった。ぶつぶつと無数の疣を附けた槍のような鋭い先端に、金色の十字架が夕栄えの光りを受けて輝いている。その十字架を捧げた附け根の所に一つ小さな円球があるが、塩野はそれを指差して云った。

「あの円い中にね、キリストが十字架にかかったとき使った本物の十字架の一片と、茨の冠の本物の切れ端が封じ込んであるんだそうだよ。これを最後にしたいんだが、あの十字架のところへ、うまい具合に白い雲が一つ来てくれんと勿体ないね。どうかな。」

「そんなこと考える方が勿体ないや、撮れればいいさ。」と久慈は云った。

「よし、じゃ、撮ろう。」

塩野は暫く黙祷していてからぱちりとシャッタを切った。