Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
椅子にもたれて煙草をうまそうに吹かせていても、久慈は東野との昼間の言葉のやり取りから吹き上って来る聯想にまだ悩まされて困った。
「どうも分らん。ノートル・ダムを見てから、頭がへんになった。」
とこう不意に云って久慈はまた壁の花模様に眼を上げた。
「何が分らないの? 俳句?」
「分らんことばかりになって来た。分っていた筈だったんだがなア。みな分っていたんだ。」
「そんなに自分を失ったの。それは困るわね。」
真紀子は云い捨てるようにして立ち、バスルームのドアを一寸開けて見た。そして、久慈の後ろに廻ってから寝台の上へ上衣を脱ぎ、
「ちょっと失礼しましてよ。ここの中で衣物脱げないの。暫くこちらを見ないでね。」
と云いつつシュミーズのままバスルームへ這入っていった。今まで気づかずにいたのに真紀子にそう云われて、初めて匂って来る空気に久慈のいろいろの考えも朧ろに途絶えてしまった。花瓶にさしてある薔薇のあたりから、身動きするごとにかすかに匂いを嗅ぐのも今に限ったことではなかったが、この夜は特に、何かの約束を強いられているように強く真紀子の匂いを久慈は感じるのだった。
「分らなくなったところへ、これか。