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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

とこう久慈は呟いて笑った。しかし、そのとき同時に、彼は何もかも分らなくなったとてどこ一つ困ってもいない自分に気がついた。

「そうだ、分らなくたって、何も困らんというのは、これやいったい何んだ。何かここになければならぬじゃないか。そんなら、そ奴はいったい何ものだ。」

がちりと頭の中で石が音を立てたように久慈の表情は無くなった。

「自分を失ったの、それは困るわね。」

とこう云い捨てて浴室へ這入った真紀子の言葉が、突然謎めいた色となって久慈に響き戻って来るのを、「何をッ。」とまた久慈は微笑しながら頭の髪を引っ張りつづけた。

東野や矢代が絶えず攻撃して来る独自性のない自分の欠点や痛さを、全く違った角度から今また真紀子に突かれたように感じつつも、彼はまだ降参出来ぬある観念に獅噛みつづけ、寝台の上の真紀子の服をちらりと眺めた。

「俺の考えているものは、女のことでもなければ、自分のことでもない。まして他人のことなんかじゃ無論ない。分らんのはそ奴なんだ。そ奴が良いものか悪いものか、それも知らぬ。しかし、そんな不必要なことを俺に考えさすというのは、それや何んだ。」

久慈は頭を椅子の背に倚らせて眼を細め、脱けきれぬ念いを追いつめてゆくうちに、ふと浴室から響いて来る水の流れの音に気をとられた。