Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

隣室のルーマニアの娘が小声で唄を歌っているのも恐らく何か歓びがあるからにちがいない。

「われ三十路半ばにして道に踏み迷う。」

久慈はときどきダンテの悩んだそんな言葉も口にのぼって来た。しかし、自分にもし今日の悩みがあるとすると、真紀子にほんの少し事実を狂わせて嘘をつけば良いことだけだと思った。それも名医のように嘘を上手くつけばつくほどどちらも幸福になるのである。もし千鶴子に話したように本当のことをうち明ければ、真紀子に打撃を与えることは、あるいは計り知れぬかもしれない。それなら何ぜ嘘が悪いのだ。――

久慈はそう思いながらも、しかし、自分は今日は本当ばかりを一つ真紀子に云ってみよう、そして、嘘を云うのと同じ程度に二人が前より一層気楽になってみようと思うと、それがまた今日一日の楽しみになって来るのだった。

服を着替えコーヒーを※(「口+云」、第3水準1-14-87)咐けたときドアの下に一枚差してある紙片を彼は見つけた。取り上げて読むとそれは真紀子でもう眠っているときに来たらしく、正午すぎ一時間ばかりルクサンブールのベルレーヌの前のベンチにいるから来てほしいと書いてあった。