Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
朝昼を兼ねたコーヒーを飲んでいると千鶴子が約束の通りに来た。いつもより瞼の脹れぼったく見えるのが新鮮な感じだった。長い廻り階段を昇って来たばかりで呼吸を大きく肩に波打たせながら、黙ってずっと窓の欄干の傍へよって来ると、何ぜかやはり黙って千鶴子は久慈を見なかった。
「昨夜は飛んだ眼に会せて失礼、君、お昼は?」
千鶴子はもうすませて来たと云って前の建築学校の屋根の上を眺めていた。昼間だと男の部屋へ来るのも何んの怖れもないくせに、夜中だと一室に男といるのがあんなに不安になるものかと久慈は思い、昨日のような出来事の総てもあれは夜のせいだったからだと、何かそんなことが今さら結論めいて来るのだった。
「真紀子さんいらしって?」
「来たらしいんだが、眠ってたもんだから紙きれ置いて帰っていった。ベルレーヌの前のベンチにお昼からいるって書いてあるから、これから行って来なくちゃ。」
「そして、あなたどうなさるおつもりなの?」
浮唐草の水色の欄干を背に千鶴子は唇の跳ねた皮肉な笑顔だった。
「しようがない。不善を改むこと能わざるは、是れわが憂いなりだ。論語をこれから講義しに行こうてんだ。