Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「千鶴子さんに会うのも良いが、どうもね。」
と矢代は笑いに紛らしながら、争われず塩野を見る眼も、さきからパリを懐しむ思いの方が遥かに強かった。そして、ともすると彼をただその背景の上に泛べているだけの自分を感じては、塩野もまた、こちらを同様に見ているにちがいないと思い出され、ふと差し覗いてくるような寂しさが、冷え冷えと薄気味悪い影を流して通りすぎた。それも、もしこのまま千鶴子に会えば、一層拡がるばかりのパリの影が、今はその前兆のような不吉な尾を、ちらりと跳ね上げ冷笑しつつ流れているかと思われる。
「どうもしかし、旅というものは不思議なものだなア。行くときにはただ夢中で行くが――君、もう暫くすると辛いですよ。こんなに辛いものだと思わなかった。これであなたや千鶴子さんと会うのも嬉しいが、惜しいことに、外国へ行く前に一度会っておいたんだと、もっと良かった。」
「そうそう、それや分る。」
と塩野も眼を空に上げて云った。彼のその見上げている空中に映っている異国の幻影が、楼閣に楼閣を重ねた絢爛たる光の綾を鏤め、また自然と矢代の頭にも映り返り、塩野を見るのだった。暫くこうした幻影が幻影を見ている間を、窓の外では、晩秋の光線が徐徐に日暮れに傾きつつ、樹樹の末枯れた葉の影を深めてゆく。