Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
それに、千鶴子もこちらの考えたほどのことは考えた上に、なお婦人として心得るべき特別の事情も、種種考え直して苦しんでいることなど、およそ定っていることであった。
「つまり、そこだ。自分の会いそびれていたのは。」
と、矢代は煙草屋を出て来るとき口から思わず出かかった。しかし、また向うにしても、こちらの考えを潜って、思いを巡らせていてくれたものなら、悪気があって強いて会わぬわけではない事情など、虫好くして考えれば、分ってくれそうなものだとも思われる。しかし、それにしても、矢代に不思議なことは、会いたいとか見たいとか、一途に思っていたことに変りのなかった自分を、それをせき留めているものの事実あるのは、たしかに自分一人の胸には分らぬ何事かだと思った。そんな自分の所存ではない、二人の間にのみ潜んでいる何事かは、恐らく二人が会ってもまだ分らないものにちがいない。そして、それもみな、異国で出会った男女の間にばかり起り得ることであってみれば、今は運を天に任せて出て行く以外に法もない。
そうは思いながらも、矢代はなおボックスに恐れを感じ遠く離れたまま立っていた。枯草の中にぽつりと尖がっている、無愛想な灯台形の白い小箱が、運命を判じるアンテナのように底気味悪く見え、その声を運んで来るものまでが、ただの科学的なことではすまされぬ