Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そして、それぞれ父の身体をアルコールで拭き浄めていくのだった。母と幸子は頭と胸を拭き矢代は胴と足へ廻った。
父の身体にはもう薄紫の斑点が泛んでいて、筋肉を圧えてみる指先に弾力が感じられず、たしかにこれはも早や父ではない物体に変っていると、矢代は思った。
拭き終ってから、皆で父を吊り上げて棺へ納めようとしたとき、背中が汗ばんだ温くもりで湿っているのに、死臭が幽かに鼻を打った。すると、胸の下へ手を入れていた幸子が突然父から手を放した。
「お父さんまだ温かいわ。もう一度お医者さんに診ていただこうじやありませんか。あたし死んだんだと、どうしても思えないわ。」
強くそういう幸子に母も戸迷ったらしく、同様に手を放すと、
「そうだね。」と云ってぼんやりした。一瞬、争われぬ父の死に拘らず、誰も疑いを起した沈黙がつづいた。
「ね、そうしましようよ。こんなに温いの、死んでる筈ないじゃありませんか。」
とまた幸子は片膝をついたまま皆の顔を見廻した。
「それや駄目だよ。さア入れよう。」と矢代はためらう皆を促して云った。
「だって、こんなに温いんですもの。あたし、このまま入れるのいやだわ。