Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

Lesen Sie 日日平安 (にちにちへいあん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.297 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

それからふと、自分が本当に腹を立てているのに気がついた。しんじつ黒藤源太夫のために来てやったような錯覚にとらわれたらしい、菅田平野は「なんと、――」とつぶやいて苦笑した。

小者が洗足の道具を持って来た。家扶が現われて奥へとおれと云う、菅田平野は足を洗い、袴の裾のはねを払い、肩から旅嚢を取り、刀を脱して、右手に持ちながら広縁へあがった。

案内されたのは六帖ばかりの暗い部屋であった。そこで形式だけの茶菓が出た。薄くてぬるい茶に、黴の生えたような打物である。菅田平野は茶をひと口啜っただけで、あとは手を出さなかった。彼は両手を膝に重ね、心を鎮めて、脇玄関から庭、広縁からその部屋へ来るまでの、建物の配置を頭の中に書きとめた。四半刻ほども経ってから、若侍が現われて「こちらへ」と云った。菅田平野はちょっと考えたが、旅嚢の脇へ刀を置いて立った。中廊下を少しゆき、いちど左へ曲って、八帖の明るい座敷へとおされた。そこはさっきの庭とは反対側に面しているらしい、あけてある障子の向うに、石燈籠などを配した内庭を隔てて、土蔵が三棟並んでいる。たぶん武庫だろうと思ってぼんやり見ていると、まん中の土蔵から中年の侍が出て来た。