Japanische Klassiker mit Furigana
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にちにちへいあん
日日平安
山本 周五郎
Lesen Sie 日日平安 (にちにちへいあん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.297 Zeichen · 56 Bildschirme
疲れきって、空腹で、死ぬほど眠いにも拘らず、菅田平野は高邁な感情に包まれていた。精神もすがすがしく、爽やかであった。もっとも腹の中のことはべつである。腹の中では(もうずっとまえから)まったく違う声が彼を非難していた。
「くうくうくうこの虚栄心の強い偽善者め」とその声は云うのであった。「きさま空腹のあまり切腹のまねまでしたじゃないか、なにが侍の良心だ、きさまは充分に役立ったし、仕官は確実に眼の前にあった、くうっ、くうっ、さあ戻れ、すぐ十郎太のところへ戻れ、仕官するのが照れくさいのなら約束の金だけでも借りろ、あの男の紙入の中にはおまえに約束した金があるんだ、さあ戻ってゆけ」
「頼むから戻ってくれ、お願いだから」と腹の中の声は続けるのであった、「こんなに空腹で無一物でどうするんだ、おれはいやだぞ、こんなに腹ぺこでなにが高邁だ、おれはいやだ、いやだいやだいやだ、やいこの……なにか食わせろ、やいなにか食わせろ」
菅田平野は唇を曲げて立停った。頬が痒いので手で擦ると、乾いた泥がぽろぽろと落ちた。彼は自分の躯を眺めまわし、半ば乾いた泥まみれの、古びて継ぎはぎだらけの着物や袴を見、やはり泥だらけの素足にはいた、古下駄を見た。