Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme
「たしかに唸ったがなあ」
「ぜんたい何処にいるのだろう」
奥庭の前は寺の境内になって竹の菱垣がしてあったが、この一二年手入をしないので処どころに子供の出入のできるような穴が開いていた。其処は寺の卵塔場になっていて樫や楓・椿などの木が雑然と繁っていた。
「お寺の方へ往ってみよう」
新一はそのまま庭前のほうへ歩いて往った。破れた竹垣の傍には穂のあぎた芒が朝風にがさがさと葉を鳴らしていた。新一は時どきその垣根の破れを潜って卵塔場へ遊びに往くことがあるのでよく案内は知っていた。其処には五輪になった円い大きな石碑や、平べったいのや、角いのや、無数の石塔が立ち並んでいた。木の上では小鳥が無心に啼いていた。
新一はその墓場の中を彼方此方と歩きながら、もしや血が落ちていはしないかと見て廻ったが、足端にこぼれる露があるばかりで色のあるものはなかった。墓の前に植えつけた桔梗の花も見えた。
新一は己の家へ帰って来た。老婆が台所で釜の下を炊いていた。
「姨さん、何にもいなかったよ」
「お寺の中にはおりませんよ、お祖師様が、そんな悪いものは置きませんから」
「そうかなあ」
朝飯ができて老婆がお滝の室へ往ってみると、お滝はすやすやと眠っていた。