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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎじんのすがた

日本の怪談

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

風にものの落ちた音でもないし、また猫や犬の入って来てものに突き当った音でもなかった。

「なんだろう」

益之助は枕頭の刀架に掛けてある長い刀を執って、縁側に出て雨戸を開けた。微曇(うすぐもり)のした空に宵月が出てぼんやりした光が庭にあった。庭の中程と思う処へ十本ばかりの物干竿が転がっていた。それは家の西側の簷下(のきした)に何時も掛けてあるものであった。たしかに何人(たれ)かが其処から持って来たものである。益之助は不思議に思った。そして、急に大きな声で笑いながら雨戸を閉めて奥の間へ引返した。

「なにかありましたか」

女房が聞いた。

「なんでもないよ、物干竿が庭の中へ集まって来ている、何人かが持って来たろう」

益之助は嘲笑いながら寝床へ入った。

「おかしいではありませんか」

「狸か何かだろう、そのうちには、豪(えら)い目に逢してやるぞ」

朝になって女房が台所の方へ往った後で、益之助は何時ものように雨戸を開けたが、宵の物干竿のことが頭にあるので開けながら庭の方を見た。もう物干竿は影も形もなかった。

「ほう」

と、云って益之助は眼を※(みは)ったが、すぐ思い返して笑いだした。