Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
一行十余人の人びとは水草の生えた池の縁におりて彼方此方に眼をやった。
そのうちに一行の一人が汀の水草に流れかかっている櫛を見つけた。
「櫛がある、櫛がある」
人びとはその男の指さす方に眼をやった。其処には水に落ちたばかりの黄楊の櫛があった。
「なるほど櫛じゃ」
「何人か見覚えはないか」
すると壮い男の声が云った。
「それはたしかに、お種さんの挿しておった櫛じゃ」
それは彼の猪作であった。
「猪作が云やまちがいない、遊びに往きよったから」
暫時の間何人も口を開ける者がなかった。一行の眼は青澄んだ池の面に走った。
「どうしても他じゃない」
「どうしてあげる」
「鉤のようなものを入れるか」
「はやけりゃ助かるかも判らん」
「何人か胆力の強い者はないか、入ってもらいたいが」
人びとは頭をあつめて評議をした。
「あしが入ってみよう」
それは猪作であった。
「そうか入ってくれるか」
「そりゃいい」
猪作は衣を脱ぎ、脚袢を除って池の中へ入り、二足三足往ったが水はすぐ股近くになった。猪作はちょっとそこで立ちどまって空気を吸うてから、もんどりを打つようにして潜って往った。
人びとはじっとして猪作の出て来るのを待っていた。