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Japanische Klassiker mit Furigana

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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme

Aozora Bunko

煙草を一ぷく吸う位の間を置いて、猪作が潜った処から二間ばかりの前の水の上が傘を拡げたようにぱっと赤濁った、と思う間もなく、魚のように腹をかえして浮きあがって来たものがあった。それは右の腕の附け根から切り執られた猪作の死骸であった。腕の切り口にはなまなました血が見えていた。人びとはわっと云って逃げた。

猪作が怪しい死方をしたのでもうほど落ちへ往ってお種を探さなかったが、他に手がかりがないうえにほど落ちにはたしかに櫛があったところから、お種も猪作のような怪しい死方をしているものとして、お種の家ではお種のいなくなった日を命日にしてその冥福を祈ることになった。

お種がそんなことになった時、お種の家の者にもまして悲しんだのは伝蔵であった。伝蔵は日傭に来たかえりには何時もお種の家へ寄って母親を慰め、それによって己を慰めていた。

その日も伝蔵は日傭の帰りにお種の家へ寄って母親と話していて遅くなって帰って往った。それは雨催いの暗い夜であった。伝蔵は日浦坂をあがって池の近くへ往った。と、

「来な、来な」

と、何処からともなしに呼ぶ声がした。伝蔵は不思議に思って足を止めた。