Japanische Klassiker mit Furigana
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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
Lesen Sie 日本の文学 3 森鴎外(二) (あべいちぞく) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.545 Zeichen · 140 Bildschirme
沼の畔から右に折れて登ると、そこに岩の隙間から清水の湧く所がある。そこを通り過ぎて、岩壁を右に見つつ、うねった道を登って行くのである。
ちょうど岩の面に朝日が一面にさしている。安寿は畳なり合った岩の、風化した間に根をおろして、小さい菫の咲いているのを見つけた。そしてそれを指さして厨子王に見せて言った。「ごらん。もう春になるのね」
厨子王は黙ってうなずいた。姉は胸に秘密を蓄え、弟は憂えばかりを抱いているので、とかく受け応えが出来ずに、話は水が砂に沁み込むようにとぎれてしまう。
去年柴を苅った木立ちのほとりに来たので、厨子王は足を駐めた。「ねえさん。ここらで苅るのです」
「まあ、もっと高い所へ登ってみましょうね」安寿は先に立ってずんずん登って行く。厨子王は訝りながらついて行く。しばらくして雑木林よりはよほど高い、外山の頂とも言うべき所に来た。
安寿はそこに立って、南の方をじっと見ている。目は、石浦を経て由良の港に注ぐ大雲川の上流をたどって、一里ばかり隔った川向いに、こんもりと茂った木立ちの中から、塔の尖の見える中山に止まった。そして「厨子王や」と弟を呼びかけた。