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Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんせつせん

日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集

葉山 嘉樹

Lesen Sie 日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集 (しゅんせつせん) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.935 Zeichen · 73 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は、立ち上って、三つばかり先のベンチへ行って、横目で、一渡り待合室を見廻した。幸、眼は光っていなかった。

「もっとも、俺の顔を知ってる者はいないんだからな。それに、俺だけが怪しく見えもしないんだからね。何しろ奴等にゃどいつもこいつも泥坊に見えるんだからね」

彼は、ベンチへ横になった。そして自分の寝ているベンチと並んでいる、外のベンチを検べて見た。頭を掻くような恰好をした。と、彼はもう帽子を被っていた。麦藁帽であった。彼の手が、ブルッと顔を撫でると、口髭が生えた。さて、彼は、夏羽織に手を通しながら、入口の処で押し合っている、人混みの中へ紛れ込んだ。

旦那の眼四つは、彼を見たけれど、それは別な人間を見た。彼ではなかった。

「顔ばかり見てやがらあ。足や手を忘れちゃ駄目だよ。手にはバスケット、足には下駄とな。チャンと此通り前のと同じなんだよ。いや、御無礼」

列車は、食堂車を中に挟んで、二等と三等とに振り分けられていた。

彼は食堂車の次の三等車に入った。都合の良い事には、三等車は、やけに混雑していた。それは、網棚にでも上りたいほど、乗り込んでいた。

その時はもう、彼の顔は無髭になっていた。