Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.841 Zeichen · 25 Bildschirme
由紀は動悸のはげしくなるのを感じながら、膝をつつましく進めて枕許に坐った。嫁して来てから良人と二人きりで向きあうのはそれが初めてである。休之助は感情の溢れるような眼で暫くこちらを見まもっていた。
「すっかり母から聞いた、礼を云いたいが、その礼よりもさきにたのみたいことがある」
「はい……」
「この三日うちにそなたの手で八十金ととのえて貰いたいのだ」
とつぜんでもあり余り思いがけない言葉なのであっと思った。然し由紀はうち返すように、
「かしこまりました」
と答えた。休之助はしずかに眼をつむった。
「わけも話さず、こんなたいまいな金子をつくれと云うのは無理だ、これはよく承知しているし、口ではなにも云えないが、私を信じて調達して呉れ」
「はい……」
「母はあした善光寺詣でに立つ筈だ、往き来に三日はかかるのが毎年の例になっている、そのあいだにたのむ」
「はい、かしこまりました」
こんどは心をきめて、由紀ははっきりとそう答えた。
春と秋の彼岸に親しい婦人たちと善光寺へ参詣にゆくのがなほ女の毎年のならわしだった。休之助に不慮のことがあったので今年はやめると云ったが、それでは待っていた人たちに気のどくだからと、休之助がすすめて出かけて貰った。