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Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.412 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

それはそのとおりだと思ったが、虚名という言葉が彼にはくやしかった。掃いて捨てるほどいるという表現も聞きのがせなかった。それなら秀才ということを虚名でなくしてみせよう、掃いて捨てられるなかまからぬきんでてやろう、そろそろ意地のでる年ごろになっていた彼は、そう考えて叔母がきびしくすればするだけその先を越すような気持になり、学問にも武芸にもしゃにむに励んでいった。あとからふりかえると、われながらよくあれが続いたと思う。まるで弓弦を張ったように緊張した明け昏れであった。僅かに寝所へはいって、燈を消して、母のおもかげを闇のなかに描きながら、「お母さま」と呼びかけるときだけが、その僅かな時間だけが、なにものにも代えがたい慰めでもあり、心の柱ともなって呉れたのである。

こうして十一歳になった年の秋のはじめに、彼の待ちに待ったときがやって来た。江戸の父から出府するようにという知らせがあったのだ、どんなに大きなよろこびだったろう、叔母の顔が蒼ざめて、眼には泪を溜め、あれこれと好きな物を料理して呉れたり、思いがけない劬わりをみせて呉れたりしたが、彼にはまるで眼にもはいらなかった。