Japanische Klassiker mit Furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.192 Zeichen · 7 Bildschirme
十二月四日
十二月四日
嵐のあとを追って、船が進むためか、噂に聞いた程船はあれない。
ビクトリアを出て一夜立った今日も空は一面に明るく、水浅黄に晴れ渡って、船腹に当って散る波は、深い藍色の波頭に瞬間の美しい金色の虹をたてる。
寒さに身を引きしめながら、何かたのしい、何か心のわくわくする気分で身を揺って居るように見える海は安逸な旅客をのせた小船をかこんで、さも愉快そうに見える。
起きるとすぐ甲板を歩きながら、私はその平明な冬の海の上を、Aが同じあの足取りで、ポクポクと彼方に歩いて行く姿を眺める。
其は只其那気がする丈なのではない、真個に見えるのだ。
あの波止場の板敷の上を歩いて人にかくれ、荷にかくれて、段々小さくなって行った通りに、Aがポクポクと正面を見て歩きながら、ポツリと小さく消え去ってしまう。
此の気分は、不思議な淋しさを誘う。思わずその線をながめてあのとき船で思ったようにもう一度振返って手を振ってくれればいいと云う心持がする。
不思議な淋しさ、それに引かれて行くような心持のする淋しさ。カタカタと云う靴の踵の音まで、私にはするような心持がする。
別離の苦痛は、私共にとって、互の理解に対して、決して運命の決定的なものではない。