Japanische Klassiker mit Furigana
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はえ
日輪 春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪 春は馬車に乗って 他八篇 (はえ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.478 Zeichen · 14 Bildschirme
「先刻出ましたぞ。」
答えたのはその家の主婦である。
「出たかのう。馬車はもう出ましたかのう。いつ出ましたな。もうちと早よ来ると良かったのじゃが、もう出ぬじゃろか?」
農婦は性急な泣き声でそういう中に、早や泣き出した。が、涙も拭かず、往還の中央に突き立っていてから、街の方へすたすたと歩き始めた。
「二番が出るぞ。」
猫背の馭者は将棋盤を見詰めたまま農婦にいった。農婦は歩みを停めると、くるりと向き返ってその淡い眉毛を吊り上げた。
「出るかの。直ぐ出るかの。悴が死にかけておるのじゃが、間に合わせておくれかの?」
「桂馬と来たな。」
「まアまア嬉しや。街までどれほどかかるじゃろ。いつ出しておくれるのう。」
「二番が出るわい。」と馭者はぽんと歩を打った。
「出ますかな、街までは三時間もかかりますかな。三時間はたっぷりかかりますやろ。悴が死にかけていますのじゃ、間に合せておくれかのう?」
四
野末の陽炎の中から、種蓮華を叩く音が聞えて来る。若者と娘は宿場の方へ急いで行った。娘は若者の肩の荷物へ手をかけた。
「持とう。」
「何アに。」
「重たかろうが。」
若者は黙っていかにも軽そうな容子を見せた。