Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

白い繊細(きゃしゃ)な薬指のところに指輪を嵌(は)めた手で、巻煙草を燻すお新の手付を眺めると、女の巻煙草は生意気に見えていけない、そうは山本さんは思わなかった。反(かえ)ってお新のは意気に見えた。

何を為ても悪く思えないような女が世の中には有る。山本さんに言わせると、丁度お新はそういう女の一人だ。

山本さんは女達の為に、隣座敷を用意して置いた。それから一日二日の間、山本さんの部屋でも、隣座敷の方でも、女らしい笑声が絶えなかった。

鼻の具合の悪いお牧が手術を受けに入院する頃は、お新も東京にある親戚の家へ行った。

急に山本さんは寂しく感じた。どうかすると彼は旅舎の小娘を借りて、近くにある活動写真へ連れて行って、花のような電燈の点(つ)いたり、消えたりする楼上に席を取りながら、独りでそういう心を紛らそうとした。一時に囃(はや)し立てる太鼓、鈴、喇叭(らっぱ)などの騒がしい音楽が沈まった後で、クラリオネットだけ吹奏されるのを聞いていると、その音は灰色な映画の方よりも、むしろ眼前(めのまえ)に居る男や女の方へ彼の心を連れて行った。電燈が明るくなる度に、山本さんは睦(むつ)まじそうな若い夫婦の客を眺めた。