Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
先生は岩の間に造りつけてある黒い扉を開けて高瀬に見せた。そこには、隠れた地の底から涌いて来たままの鉱泉が淀んでいた。
「どれ、御案内しましょう。まだ畳もすっかり入れてありません」
先生は隠居さんから受取った鍵で錠前をガチャガチャ言わせて、誰も留守居のない、暗い家の中へ高瀬を案内した。閉めてあった雨戸を繰ると、対岸の崖の上にある村落、耕地、その下を奔り流れる千曲川が青畳の上から望まれた。
高瀬は欄のところへ行って、川向うから伝わって来る幽かな鶏の声を聞いた。先生も一緒に立って眺めた。
「高瀬さん、この家は見覚えがありましょう――」
先生にそう言われると、高瀬にも覚えがある。高瀬は一度小諸を通って先生の住居を訪ねたことがある。形は変えられたが以前の書斎だ。
「どうせ、この建物はこうしてありますから、皆さんにお貸し申します……御入用の時は、何時でも御使い下さい」
と言いながら、先生は新規に造り足した部屋を高瀬に見せ、更に楼階の下の方までも連れて行って見せた。そこは食堂か物置部屋にでもしようというところだ。崖を崩して築き上げた暗い石垣がまだそのままに顕われていた。