Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
先生は今度雇い入れた新教員のことを学士に話した。
初めての授業を終って、復た高瀬がこの二階へ引返して来る頃は、丁度二番の下り汽車が東京の方から着いた。盛んな蒸汽の音が塾の直ぐ前で起った。年のいかない生徒等は門の外へ出て、いずれも線路側の柵に取附き、通り過ぎる列車を見ようとした。
「どうも汽車の音が喧しくて仕様が有りません。授業中にあいつをやられようものなら、硝子へ響いて、稽古も出来ない位です」
大尉は一寸高瀬の側へ来て、言って、一緒に停車場の方へ向いた窓から見下した。大急ぎで駈出して行く広岡理学士の姿が見えた。学士は風呂敷包から古い杖まで忘れずに持って、上田行の汽車に乗り後れまいとした。
これと擦違いに越後の方からやって来た上り汽車がやがて汽笛の音を残して、東京を指して行って了った頃は、高瀬も塾の庭を帰って行った。周囲にはあたかも船が出た後の港の静かさが有った。塾の庭にある桜は濃い淡い樹の影を地に落していた。谷づたいに高瀬は独り桑畠の間を帰りながら、都会から遁れて来た自分の身を考えた。彼が近い身の辺にあった見せかけの生活から――甲斐も無い反抗と心労とから――その他あらゆるものから遁れて来た自分の身を考えた。