Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
子安は心から出た声で快活に笑った。「まるで、ゴツゴツした岩みたような連中ばかりだ」と彼は附添した。
「しかし、君、その岩が好くなって来るから不思議だよ」と高瀬は戯れて言った。
子安は先へ別れて行った。鉄道の踏切を越した高い石垣の側で、高瀬はユックリ歩いて来る学士を待受けた。
「高瀬さん、私も小諸の土に成りに来ましたよ」
と学士は今までにない忸々しい調子で話し掛けて、高瀬と一緒に石垣側の段々を貧しい裏町の方へ降りた。
「……私も今、朝顔を作ってます……上田ではよく作りました……今年はウマくいくかどうか知りませんがネ、まあ見に来て下さらんか」
こう歩き歩き高瀬に話し掛けて行くうちに、急にポツポツ落ちて来た。学士は家の方の朝顔棚が案じられるという風で、大急ぎで高瀬に別れて行った。
大きな石の砂に埋っている土橋の畔あたりへ高瀬が出た頃は、雨が彼の顔へ来た。貧しい家の軒下には、茶色な――茶色なというよりは灰色な荒い髪の娘が立って、ションボリと往来の方を眺めていた。高瀬は途を急ごうともせず、顔へ来る雨を寧ろ楽みながら歩いた。そして寒い凍え死ぬような一冬を始めてこの山の上で越した時分には風邪ばかり引いていた彼の身体にも、いくらかの抵抗する力が出来たことを悦んだ。