Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
出るにつけても、母親は独で気を揉で、「旦那様というものは奥様次第でどうにでもなる、と言っては済まないが」から、「御奉公は奥様の御機嫌を取るのが第一だ」まで、縷々寝物語に聞かされました。忘れもしない。母親に連れられて家を出たのは三月の二日でした――山家ではこの日を山替としてあるのです。微し風が吹いて土塵の起つ日でしたから、乾燥いだ砂交りの灰色な土を踏で、小諸をさして出掛けました。母親は新しい手拭を冠って麻裏穿。私は萌黄の地木綿の風呂敷包を提げて随いて参りましたのです。こうして親子連で歩くということが、何故かこの日に限って恥しいような悲しいような気がしました。浅々と青く萌初めた麦畠の側を通りますと、丁度その畠の土と同じ顔色の農夫が鍬を休めて、私共を仰山らしく眺めるのでした。北国街道は小諸へ入る広い一筋道。其処まで来れば楽なものです。昔の宿場風の休茶屋には旅商人の群が居りました。「唐松」という名高い並木は伐倒される最中で、大木の横倒になる音や、高い枝の裂ける響や、人足の騒ぐ声は戦闘のよう。私共は親子連の順礼と後になり前になりして、松葉の香を履で通りました。