Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
でも、早く眼が覚めるように成っただけ、年を取ったか、そう思いながら、雨の音のしなくなる頃には、彼は最早臥床を離れた。
やがて彼は自分の部屋から、雨揚りの後の静かな庭へ出て見た。そして、やわらかい香気の好い空気を広い肺の底までも呼吸した。長く濃かった髪は灰色に変って来て、染めるに手数は掛かったが、よく手入していて、その額へ垂下って来るやつを掻上げる度に、若い時と同じような快感を覚えた。堅い地を割って、草の芽も青々とした頭を擡げる時だ。彼は自分の内部の方から何となく心地の好い温熱が湧き上って来ることを感じた。
例のように、会社の見廻りに行く時が来た。大塚さんは根岸にある自宅から京橋の方へ出掛けて、しばらく会社で時を移した。用達することがあって、銀座の通へ出た頃は、実に体躯が暢々とした。腰の痛いことも忘れた。いかに自由で、いかに手足の言うことを利くような日が、復た廻り廻って来たろう。すこし逆上せる程の日光を浴びながら、店々の飾窓などの前を歩いて、尾張町まで行った。広い町の片側には、流行の衣裳を着けた女連、若い夫婦、外国の婦人なぞが往ったり来たりしていた。