Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
小言一つ言わなかった……唯、彼女を避けようとした……そして自分は会社のことにばかり出歩いた……さもなければ、会社の用事に仮托けて、旅にばかり出掛けた……そんなことをして、名のつけようの無い悲哀を忘れようとした……
おせんと同棲して五年ばかり経った時の大塚さんは、何とかして彼女と別れる機会をのみ待った。機会が来た……しかも堪え難い形でやって来た……それを大塚さんは考えた。
彼女の旧の居間へ行って見た。今は親しい客でも有る時に通す特別な応接間に用いている。そこだけは、西洋風にテーブルを置いて、安楽椅子に腰掛けるようにしてある。大塚さんはその一つに腰掛けて見た。
可傷しい記憶の残っているのも、その部屋だ。若く美しい妻を置いて、独りで寂しく旅ばかりするように成ったということや、あれ程親戚友人の反対が有ったにも関らず、誰の言うことも聞入れずに迎えたおせん、その人と終には別れる機会をのみ待つように成って行ったということは、後から考えれば、夢のようだ。実際、それが事実であったから仕方ない。何物にも換えられなかった楽しい結婚の褥、そこから老い行く生命を噛むような可恐しい虫が這出そうとは……