Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
見上げれば、ちぎれちぎれの綿のような雲も浮んで、いつの間にか青空になりました。
ああ朝です。
男山、金峯(きんぷ)山、女山、甲武信岳(こぶしがたけ)、などの山々も残りなく顕れました。遠くその間を流れるのが千曲川の源。かすかに見えるのが川上の村落です。千曲川は朝日をうけて白く光りました。
馬上のお隅は首を垂下げておりましたが、清(すず)しい朝の空気を吸うと急に身体を延して、そこここの景色を眺め廻して、
「貴方(あんた)、お願いでごわすが、爰(ここ)から家へ帰って下さい」
と言われて、源は呆(あき)れながらお隅の顔を見上げました。
「折角、爰まで来て、帰ると言う馬鹿が何処にある」
「私はどうしても平沢へ行きたくないような心地(こころもち)がして……気が咎(とが)めてなりゃせん」
「お前はどうかしてるよ。今、爰から帰って何になるぞい。自分の身体が可愛(かわいい)とは思わねえかよ」
「噫、私は死んでもかまわない」
「何? 死んでもかまわない?」と源は首を縮めて、くすくす笑って、「ふふ、馬鹿も休み休み言え。こんな蕎麦も碌々出来ねえような原の上でさえ、見ろ、住んでいる人すら有るじゃねえかよ。