Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わせだだいがく

早稲田大学

尾崎 士郎

Lesen Sie 早稲田大学 (わせだだいがく) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.204 Zeichen · 220 Bildschirme

Aozora Bunko

「来島はもう船に乗ったかい?」。

「――はア、月がよかけん船の上で一杯飲むというとりました」。

その声をうしろに聞き流して、杉山はもう船場の方角へ走りだしていた。船場を駈けぬけるとすぐ前が浜である。

白い砂をざくざくと踏んで傾斜面を水際の方へおりてゆくと、四、五町はなれた海の上に小さい灯かげが一つ揺れうごく光を波に落している。波止場にはもう人の影は見えなかった。風のつよい夜で、月のあかるい空の下に、港にならぶ船のかたちがうす墨で描きだしたようにうかんでいる。

杉山は尻ばしょりをしたまま砂丘の上に立って、

「おうい」。

と叫んだ。「来島ア、――恒喜いるかア!」。

太い声は地ひびきを立てて寄せかえしてくる波の音に吸いこまれたが、杉山の声はだんだん高くなり、やがて全身からしぼりだすような甲高い声になった。

「来島ア、――」。

波がしらの列をすべってやっとその声が小刻みにうごいている艀に届いたらしい。カンテラの光のような灯かげがしきりに合図をしている。

「誰かア、――?」。

と呼びかえしている声の、かすかなひびきだけが杉山の耳に残った。そう言えば重なりあった黒い人影がちらちらと動いている。