Japanische Klassiker mit Furigana
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わせだだいがく
早稲田大学
尾崎 士郎
Lesen Sie 早稲田大学 (わせだだいがく) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.204 Zeichen · 220 Bildschirme
5
――誰にだって意味は通じているのだ。それを口に出して言い得ない気もちが、別離の思いをひとしお深くするのであろう、黙々として顔を見合せたまま誰ひとり立とうとするものもなかった。
舷側にあたる波の音がだんだん烈しくなってきた。さア、といって疋田が先ず腰をあげた。
「そろそろ帰らんといかんぞ、おれだけ船に残って送ってゆくけん、みんなひと先ずかえっとれ」。
「送るとや?」。
久田が咳こんだ声で言った。「送るちうて、貴様どけぇ行くか?」。
「下関に用事があるからな、――明日朝すぐかえる」。
「何の用事か?」。
「よか女子が待っとるたい」。
そんな言葉を真にうける男は一人もいなかったが、みんなへらず口を敲きながら波の上にゆれている艀に乗り移った。もう十二時を過ぎたであろう、――遠い海潮の唸りの中に秋は早くも忍びよっているのである。
5
次の日の朝、下関で疋田と別れた来島が、寝巻のままの姿で上甲板を歩いていると、数人の船客がどやどやと船橋をのぼってきた。何気なしに欄干によりかかって下を見おろしている彼の眼に、そのとき古い社中同人である岩木熊五郎と木村利雄の顔が映った。
来島は機先を制するつもりで、機関室のかげからタラップをのぼってくる二人の眼の前へぬっと顔をつきだした。