Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Lesen Sie 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.283 Zeichen · 329 Bildschirme
それからひと月ほど経って、居士の別宅は二軒ほど手前の家へ移転した。以前は東京朝日新聞社の若菜貞爾が住んでいたとかいうことで、格子作りの入口が三畳、それから右へ廻り縁で八畳の座敷がある。そこが居士の書斎で、そのほかに薄暗い四畳が書物の置場、三畳が榎本君の部屋、台所には畳が一畳入れてあって、そこに金蔵老人が火鉢をひかえて湯の番をしていた。
およそ福地家に出入りする者で金蔵老人の名を識らない者はないくらいに、彼は有名であった。江戸以来の家来で、苗字は剛坂といったように記憶している。剛坂金蔵、名前からして何だか物々しくきこえるが、忠実で善良で非常にやかましい老人で、少しでも気に食わないことがあると、だれかれの容赦なしに睨み付ける。時によると、主人でも叱り付けるという勢いであるから、この金蔵老人に睥睨されると、大抵のものは縮み上がってしまうのである。それは榎本君からかねて言い聞かされているので、わたしは戦々兢々として老人の眼色をうかがっていたが、それでも時々に叱られた。しかし一面には非常に親切で、若い者にもよく気をつけてくれるので、わたしたちに取っては怖いような懐かしいような老人であった。