Japanische Klassiker mit Furigana
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はる
春
岡本 かの子
Lesen Sie 春 (はる) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.864 Zeichen · 48 Bildschirme
だが、お民の母性的注意深さも、それには敗けて居ず、今日も京子の後からついて来た。京子はそれに反撥する弾条仕掛けのような棘げ棘げしい早足で歩きながらお民を振り返った。
――まだ踵いて来るの。私、直ぐ帰るから、先へお帰りよ。
――はい。
お民は此の上逆おうとはしないで、少し引き返したところの狭い横丁へ、いつものように隠れ込んだ。これはお民が京子に散歩の途中から追い払われ始めてから二三度やった術である。こんな他愛もない術を正気の者なら直き感づくであろうに、と其処の杉の生垣の葉を片手の親指と人差指とでお民は暫くしゃりしゃり揉んで居た。すると、あの気の好い中年美人の狂気者が、頻りにお民にいとしく可哀相に想われるのだった。昔、評判の美人であり、狂人になっても、こどものうちからの友達の奥様に引きとられるまで、さぞいろいろの事情もあったろうに、何という子供まる出しな性分だろう。あれがあの人の昔からの性分なのか、それとも狂人というものが凡そああいう気持のものなのか。お民は、国で養女の年端もゆかない悪智慧に悩まされた事を想い出した。やっぱり奥様のお友達だけあって生れが好いからなのかしら、それであんなに自分の養女などとは性分が違うのかしらん、などと考えた。