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Japanische Klassiker mit Furigana

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はる

春

岡本 かの子

Lesen Sie 春 (はる) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.864 Zeichen · 48 Bildschirme

Aozora Bunko

涙を流す。丁寧に涙をハンケチで拭い取り、何かまたすこし口籠りながら呟くと元のように、首を左右に振り続ける。附き添う老婢のものごし、服装の工合。何処か中流以上の家庭の若夫人ででもあるらしい。

その隣席には手足の頑丈な赫ら顔の五十男が手織縞の着物に木綿の兵古帯。艶のよいその赫ら顔を傾けて独り笑いに笑い呆けて居る。声を立てない、顔だけの笑い。嬉しいのか楽しいのか判然せぬ笑い。これは一体何狂というのか、と加奈子は危く笑いに曳き入れられそうな馬鹿々々しい自分の気持を引き締めながらその男をつくづく眺めた。この男は農夫に違いなかった。附添は丁度、その男をそっくり女にしたような百姓女だ。妻であろう。

やや離れて中年の教員ででもあるらしい男。独りぽっちで隅の方から眼ばかり光らせて居る。痩せ抜いた体が椅子の背と一枚になっている。上品な老爺の附いた学生が絶対無言という様子で鬱ぎ込んで居る。蓄膿症でもあるのか鼻をくんくん鳴らして居る。

年増看護婦が診察室から出て来た。番に当る患者を見廻して名札を読んだ。

――吉村さん。

――はあい。

少女の口調で返事をしたのは意外にも赫ら顔の百姓男だった。