Japanische Klassiker mit Furigana
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はる
春
岡本 かの子
Lesen Sie 春 (はる) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.864 Zeichen · 48 Bildschirme
けれど今日、お民は不審を起した。お民の散歩について行くのを拒むのも、京子のこの動作のためにだと判った。京子には手紙を出す身内も友人も無いはずだ。終身癒らない狂患者として親兄弟にも死に別れた京子が、三度目に嫁いだフランス人と離縁すると同時に、奥様に引き取られて以来、京子は世間とすっかり断絶して居る。
お民が奉公に来てからも、京子に訪問客一人手紙一通来ない事を、お民はよく知って居る。
――ほんとうは私も困って居るんだよ。お京さんの出す手紙って出鱈目なんだもの。
お民から京子が毎日のように何処かへ手紙を出すことを密告された加奈子は、自分の恥しいことでも発見されたように当惑したが、お民が余り真面目に密告する様子も加奈子には可笑しい。
――お京さんはもう、今日のと合せて五通位出して居るのよ。
――へえ、どちら様へ?
――どちらってお前、それがとてもなってないの。
加奈子はつい夫か友達に使うような言葉をお民に言ってしまった。お民は加奈子の気難しく困ったような唇辺に、可笑そうな微笑も交るので、もっと訊き質したくもあり、黙って引き退るべきであるような曖昧な気持になりながら、矢張り、も少し詳しく聞きたかった。