Japanische Klassiker mit Furigana
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はる
春
岡本 かの子
Lesen Sie 春 (はる) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.864 Zeichen · 48 Bildschirme
だぶだぶの帆布のようなカーキ色の服を着て居る。ぐっしょり落花を被った頭の白髪が春陽の光にきらきら光る。
――こんにちはあ。
善良そうな笑いと一緒に挙手をした。
――はあ、こんにちはあ。
加奈子がびっくりする程大声で挨拶を返したのは、加奈子の近くの窓に佇って先刻から同じように庭を見て居た中年の男だった。男は加奈子の直ぐ傍に来た。
――ありゃあ、この病院でも古い患者です。
男が加奈子に言って聞せ始めた時、軍歌の患者は、もと来た方へ、またも軍歌を繰り返しながら歩いて行った。
――一日ああして気楽に戸外散歩してますから、体は丈夫ですよ。長生きするでしょうな。
男は兜町で激しく働くので時々軽い脳病になり、この病院へ来るのも二十年程前からなので、院内の古い患者とは知り合いが多いと言う。
――あの男は日露戦争の勇士です。第一回旅順攻撃の時負傷して、命は助ったんですが気が違ったんです。
――おとなしいんですね。
――実におとなしい。その代り治る見込がないんですな。生涯の患者ですよ。然しあの通りですから、病院でもみんなに可愛がられてます。なまじっかしゃばで正気の苦労するよりゃ、ずっと増しでしょうよ。