Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
――新庄藩は佐幕論でかたまっていますが藩主上総介殿は尊王の心にあつく、ひそかに京へこの御誓書を奉り、忠節の誠をお誓い申し上げるのです」
「……まあ」
「おわかりになりましたか」
伊兵衛は静かに眼をあげて、
「佐幕派の家老たちがそれと知って、八方から邪魔をしていたのですが、ようやく同志新島貞吉がこれを受取る手はずをつけたのです」
「ではあのかたが……?」
「お預けした男が新島です、これで彼の役目は立派にはたせました、何もかもあんたのお蔭です、――お礼を申します」
伊兵衛は両手を膝におじぎをした。
おゆきはほっと溜息をついた。やっぱり自分の眼は正しかった、よいことをしたのだ。……兄が生きているとすれば、この人たちと同じようにどこかで天子様のために働いているに違いない、そして自分のしたことがもし耳に入ったなら、兄もきっとほめてくれるであろう。
「ではこれでお暇を申します」
おゆきは立ちあがった。
「お待ちなさい、――帰るのはいいが、もし新庄藩の者が受取りに来たらどうなさるか」
「さあ……それは」
「この文匣がなくてはいけないでしょう」
伊兵衛はそういって座をすべり、うやうやしく紐をとくと、中に入っていた誓書を取出し、そのあとへ手早く偽筆の誓書を書いて入れた。