Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんせつ
春雪
久生 十蘭
Lesen Sie 春雪 (しゅんせつ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.672 Zeichen · 23 Bildschirme
「きょうは、おねがいがあってあがったの。大森の工場で働かせていただきたいと思って」
大森の工場といっているのは、航空機の機体の形材の材料試験をやっている研究所で、女子大の国文科で祝詞を勉強しているような超古典派の出る幕はない。
「働きたかったら、ここで働けばいい」
「事務や庶務なら、正直なところ、気乗りがしないんです」
柚子はながい間、稚い才覚で、自分一人の生活を、設計施工してきたわけで、廿代の娘の手にあまるような、むずかしいことでも軽々とやってのけるが、あまりにまっすぐな積極性が、時には、うるさい感じをおこさせないでもない。またはじまったと思ったが、妙な含み笑いをしていて、いつもの強情とは、どこかちがう。この年頃の自意識の強い娘は、直接、生産面にたずさわりたいなどという表現は、てれ臭くて素直にやれないのだと見てとった。
翌日、早くから工場へやってきたので、主翼工程の管理をしている技師に預け、硬度計をあてて形材の硬度を計る、簡単な仕事をやらせていたが、それから一と月ほどしたある朝、柚子のことで、憲兵の訪問を受けた。柚子が毎朝七時ごろ、大森海岸のバスの停留所に、短いときで二十分、長いときで四十分も立っているというのである。