Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.663 Zeichen · 97 Bildschirme
そのたびごとに幼いお春も「ふみが来た」と同じく叫んだ。気の弱いお道はもう我慢が出来なくなったが、それでも夫に打ちあける勇気はなかった。
こういうことが四晩もつづいたので、お道も不安と不眠とに疲れ果ててしまった。恥も遠慮も考えてはいられなくなったので、とうとう思い切って夫に訴えると、小幡は笑っているばかりで取り合わなかった。しかし濡れた女はその後もお道の枕辺を去らなかった。お道がなんと云っても、夫は受け付けてくれなかった。しまいには「武士の妻にもあるまじき」というような意味で、機嫌を悪くした。
「いくら武士でも、自分の妻が苦しんでいるのを、笑って観ている法はあるまい」
お道は夫の冷淡な態度を恨むようになって来た。こうした苦しみがいつまでも続いたら、自分は遅かれ速かれ得体の知れない幽霊のために責め殺されてしまうかも知れない。もうこうなったら娘をかかえて一刻も早くこんな化け物屋敷を逃げ出すよりほかあるまいと、お道はもう夫のことも自分のことも振り返っている余裕がなくなった。
「そういう訳でございますから、あの屋敷にはどうしてもいられません。お察し下さい」
思い出してもぞっとすると云うように、お道はこの話をする間にも時々に息を嚥んで身をおののかせていた。