Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.744 Zeichen · 434 Bildschirme
悪疫の大流行を来たした年だけに、秋とは名ばかりで残暑が強かった。その八月の末である。小日向水道町の煙草屋、関口屋の娘お袖が母のお琴と女中のお由と、三人連れで氷川神社に参詣した。関口屋はここらの老舗で、ほかに地所家作も持っていて、小僧二人のほかに若い者三人、女中三人の暮らしである。家族は主人の次兵衛が四十一歳、女房のお琴が三十七歳、娘のお袖が十八歳で、隠居夫婦は二十年前に相前後して世を去った。
もとより近所のことであるから、お袖らの三人は午過ぎに店を出た。朝は晴れていたが、四ツ(午前十時)頃からときどきに薄く曇って、いくらか涼しい風が吹いていた。町を通りぬけて上水堀に沿って行くあいだにも、二つの葬式に出逢った。いずれもコロリに取り憑かれた人々であろうと推し量られて、女たちは忌な心持になった。
日輪寺へ行き着いて、うしろの明神山へ登ると、きょうは珍らしく一人の参詣者も見えないで、大きな杉の森のなかに秋の蝉が啼いているばかりであった。明神の社前に額ずいて、型のごとく一家の息災を祈っているうちに、空はいよいよ曇って来て、さらでも薄暗い木の下蔭が夕暮れのように暗くなった。